仙台高等裁判所 昭和26年(う)390号 判決
第一、昭和二十四年三月二十四日福島県双葉郡新山町字前田渡部正夫方に於て同人より葉煙草六十四貫匁を一貫匁千円の割合に依る代金六万四千円にて譲受け
第二、之を同日前記渡部正夫方に於て十八個に梱包し内三個を同郡請戸村海岸に運搬し海上舟にて同県相馬郡中村町尾浜の自宅に所持運搬し朝鮮人岩本某に譲渡し、残十五個は同月二十八日午後十一時過頃貨物自動車で前記請戸村より相馬郡原町原町地区警察署前まで所持運搬し
たものである。
というにあるを以て、右は明かに煙草専売法三十四条第一項に違反し同法第五十七条第二項に該当する所為に関するものであつて、当該官吏の告発がなければその罪を論じ得ないものなるところ、記録中の郡山地方専売局原町専売出張所大蔵事務官門馬勝治の告発書に依れば、被告人は昭和二四年三月二九日相馬郡原町地内に於て密かに葉煙草二二九瓩(梱包数一五個)を貨物自動車に積載していたものである旨記載しているに過ぎないから「右の公訴事実中第二の葉煙草一五梱包に関する不法所持の事実について告発があつたことは疑がないが、右の記載から爾余の部分即第一の渡部正夫からの譲受の事実並びに第二の内三梱包を所持運搬して岩本某に譲渡したとの事実についても告発があつたものとは認め難く」他に之を認むるに足る何等の資料がない事件においてはこの部分についての告発はなかつたものと解するのを相当とする。
果して然らば右除外部分についての本件公訴はその訴訟条件を欠如し刑事訴訟法第三三八条第四号に依り判決を以て棄却しなければならない場合に該るものと云わなければならない」然るに原審は斯る措置に出ずることなくして進んでその実体についての審理判断を下しているのであるから、原判決は不法に公訴を受理した違法があり、既にこの点に於て破棄を免れない。